【人との繋がりを持っていない漫画家が交流会でお客さんを見つける話】第七話
【人との繋がりを持っていない漫画家が交流会でお客さんを見つける話】第六話
できることをたくさん伝えたら…
自分にとって重要なお客さんになるキーマンと出会うために、
交流会に参加し続けることにした。
先輩経営者も参加する異業種交流会で、
自分なりに覚えてもらうための作戦を実行した。
とにかくまずは覚えてもらうために、名刺を変えてみた。
シンプルに名前と会社名、連絡先だけを書いていた名刺から、
インパクトあるデザインのものにした。
裏には提供できるサービスをたくさん書いた。
何でもできますよ感を出しておいた方がいいのかもと考えたからだ。
今までの自己紹介はこんな感じだった。
「まんがを描いています。
まんがを使ったら面白く伝えることができますよ。」
これだけじゃなかなか覚えてもらえないと感じて、変えてみることにした。
先輩がクライアントになってくれたおかげで
一つ実績としてもできたから、できることを加えた。
「広告のイラストも描けます。Webのデザインもやります。」
とにかくたくさん伝えた。
まだ見ぬキーマンに刺さる事が何かはわからないけど、
どこかに引っかかってくれたらいいなと思っていた。
自分のことをいっぱい話して、
伝えられることを全部伝えたつもりだった。
話を聞いてくれた参加者の一人が、苦笑いしながら問いかけた。
「で、結局何をする人なの?」
いっぱい話したのに何も伝わってないことにショックを受けた。
自分のやっていたことが「伝える」ことじゃなくて、
ただ一方的に喋ってただけだったのかもしれないと感じて
なんだか虚しくなった。
できることをたくさん言ったのに何も伝わらない。
どうやったらちゃんと覚えてもらえるんだろう。
先輩経営者に今日交流会で起こったことを話した。
すると先輩は、5枚の資料の紙を丸めたものを、自分に向かって投げてきた。
いきなり投げられたもんだから、
驚いて1枚もキャッチできなかった。
床に散らばった5つの紙の玉を拾いながら先輩に聞いた。
「ちょっと、いきなり何ですか?」
「ほら、受け取れなかったでしょ?」
先輩が教えてくれたのは、
Apple社の創業者、スティーブジョブスが
ディレクターのリー・クロウという人に
同じことをやられていた話だった。
スティーブジョブスが自社の製品の広告に
5つメッセージを伝えようと提案した時、
リー・クロウは同じように5つの玉を投げて、
受け取れなかったジョブスに「これが悪い広告だよ」と伝えた。
人は一度にたくさんの情報を伝えられても受け取ることができない、
ということを伝える有名な逸話だった。
確かに、自分も一気に投げられたものをひとつも受け取れなかった。
いろいろ言っても何一つ伝わっていないんじゃ意味がない。
じゃあ、先輩ならどうするんですか?
つづく